ぬるぬるした犬の食器は、どこで洗っても問題ありませんが、人間とは別のスポンジを使用するように心がけましょう。
滑りのある犬の食器は細菌の温床となり、不衛生な状態となっているため、同じスポンジを使用していると人獣共通感染症になるリスクが高まります。
ところが洗剤でゴシゴシ洗っても、犬の食器に付着したぬるぬるは、なかなか落ちません。
今回は、ぬるぬるした犬の食器はどこで洗うのか悩んでいる人のために、洗剤で落ちない理由とキッチンでの正しい洗い方を紹介していきます。
執筆者の紹介
人間と同じように考えて
愛犬と一緒に生活しています。

- NEW2024年2月犬の管理栄養士を取得
- 厚生労働大臣より名簿登録を受けた管理栄養士
- 公益社団法人 日本栄養士会に所属
- 約5年間の病院栄養指導、NST、嚥下チームの実務経験あり
- 大学病院(約2年)長期療養型病院(約3年)勤務
犬の食器がぬるぬるする理由
犬の食器がぬるぬるする理由は、微生物が形成する「バイオフィルム」と呼ばれる生物膜です。
バイオフィルムを形成する微生物には、細菌やウイルスなどが含まれます。
水のあるところで発生しやすい特徴があり、犬の食器だけでなく、花瓶や排水溝などにもバイオフィルムが形成されます。
バイオフィルムの正体
バイオフィルムの正体は、微生物の集合体です。
微生物自身が生成した膜(バイオフィルム)の中で増殖を繰り返すため、食べ残しや空になった食器の放置はタブー。
長時間放置しておくと、代謝活性や性質変化により耐性をつけていくため、とくに医療現場や環境面で問題視されています。

緑膿菌の対応に頭を抱える医療従事者は多いですよね。
犬の食器に形成されるバイオフィルムは、唾液に含まれる細菌の増殖が主な要因として考えられます。
では、食器に付着する犬の唾液にはどんな細菌が含まれているのでしょうか?
犬の唾液の特性
犬の口腔内に含まれる細菌の代表例は、以下の通りです。
- レンサ球菌(92%)
- ブドウ球菌(86%)
- 大腸菌群(72%)
- カンジダ(26%)
- パーフリンゲンス(12%)
- パスツレラ(8%)
犬の唾液は口内の細菌を抑制する効果を持っていますが、食器に付着して増殖した場合、人間なら食中毒や感染症を引き起こすリスクが高まると分かります。
衛生面を考えて、犬の食器はどこで洗うべきなのか考えていきましょう。
ぬるぬるした犬の食器はどこで洗う?
口移しで食事を与えたり、食器を共有するなど過度の接触をせず、ぬるぬるした犬の食器を正しく洗浄していれば、基本的にはどこで洗っても問題ありません。
人間と同じキッチンで洗っても問題ありませんが、洗浄スポンジを分けて使用しましょう。
同じスポンジを使用している場合、人獣共通感染症になるリスクがあります。
というのもバイオフィルムが付着して、ぬるぬるした犬の食器は、一般家庭で使用する中性洗剤で落ちないからです。
なぜ、犬の食器についたヌルヌルを洗剤で落とせないのか、次でくわしく解説していきます。
ぬるぬるした犬の食器が洗剤で落ちない理由
ぬるぬるした犬の食器が洗剤で落ちない理由は、犬の唾液がアルカリ性に傾いているからです。
人間はpH6.8~7の弱酸性をしていますが、犬の唾液はpH8〜8.5のアルカリ性になっています。
アルカリ性である犬の唾液から形成されたバイオフィルムは、一般家庭の多くが使用する中性洗剤で分解しきれません。
バイオフィルムは微生物同士が結びつき、強固な構造で付着するため、ゴシゴシ洗いでも落ちない特徴があります。
では、どのように犬の食器に付着したぬるぬるを洗い落とすのか、正しい手順を紹介していきましょう。
犬の食器のぬるぬるを落とす正しい洗い方
ぬるぬるした犬の食器は、付着したバイオフィルム(膜)を破壊する必要があります。
バイオフィルムを破壊する方法は、以下5つです。
- キッチンペーパーで拭き取る
- ペット用食器洗剤を使用する
- ペット用スポンジを使用する
- 酢やクエン酸を吹きかける
- 食器洗浄機にかける
犬が食事を終えたら、すみやかに上記の方法で洗浄し、衛生管理をしましょう。
キッチンペーパーや布で拭き取る
食器を洗う前に、あらかじめキッチンペーパーや布などを用いて、バイオフィルムを破壊しておきます。
食べ物のカスや犬の唾液などが残らないように、しっかり拭き取りましょう。
バイオフィルムは水に触れると、ぬるぬる感が増して余計に洗い落としにくくなります。
乾いたキッチンペーパーや布などで拭き取って、前処理をしておくと、簡単に洗い落としやすいです。
ペット用スポンジを使用する
ペット用スポンジは、特殊繊維が使用されているため、食器を傷つけることなく、ぬめりを洗い落とせます。
傷ついた食器は、隙間に細菌が入り込んで、バイオフィルムを形成しやすい不衛生な環境となります。
ペット用食器洗剤を使用する
ペット用食器洗剤は、洗い残しがあっても害のない成分が使用されています。
天然の植物由来成分や、食品添加物を使用しているペット用食器洗剤なら、さっと洗いで簡単にぬるぬるを洗い落とせます。
ヤシ油やパーム油など、人間の手にも優しく、地球環境にも配慮されているため、排水時も安心です。


酢やクエン酸を吹きかける
犬の食器に付着したバイオフィルムは、アルカリ性由来になるため対極にあたる、お酢やクエン酸など酸性スプレーを吹きかけると綺麗に洗い落とせます。
クエン酸スプレーの作り方
クエン酸には粉末タイプとスプレータイプがあるため、掃除用途に合わせて選択するのがベストです。
粉末タイプの方が広い用途に利用できますが、犬の食器についたぬるぬるを洗い落としたいだけであれば、あらかじめスプレーで販売されているクエン酸を選択しておく方が手間なく済みます。


粉末タイプのクエン酸を利用する場合は、規定の作り方に従いましょう。


スプレータイプのボトルはご自宅にあるものや、100均やスーパーなどで、適当なものを用意しておけばOK。
ご自身の利用環境に合わせて、使い勝手の良いほうを選択してみてください。
お酢スプレーの作り方
食用のお酢を使用する場合は、お酢と水を1:2で混ぜておきます。
直接お酢を吹きかけても良いですが、強い匂いが食器に残りがちです。
犬は匂いに敏感なため、希釈しても嫌がる場合は、ホワイトビネガーや匂いのないクエン酸水を選択してみましょう。
食器洗浄機にかける
ぬるぬるした犬の食器は、食器洗浄機にかけて落とせます。
ノロウイルスの場合は85℃以上1分間の加熱が必要ですが、サルモネラやO157などの食中毒菌は、75℃以上1分間の加熱でほとんど死滅します。
熱湯消毒は非常に殺菌効果が高いため、食器洗浄機でなくても、単に沸騰した水をかけるだけでOK。
週1〜2回の熱湯消毒を目安にして、簡単に衛生環境を整えてみてください。
熱湯消毒をする場合は、変形しにくい耐熱性の犬用食器を利用して安全管理に努めましょう。
ぬるぬるした犬の食器を洗うときの注意点
ぬるぬるした犬の食器を洗ったあとは、しっかり乾燥させましょう。
乾燥が不十分な場合、すぐに細菌が繁殖して不衛生な環境に陥りやすいです。
食べ終わった後の犬の食器は、すぐに洗って拭き取りまで済ませておくのが最善ですが、日常生活を送っていく中では、そうもいかない日があります。
すぐに洗えない場合は、水に浸けておくのではなく、乾燥させた状態にしておくほうがバイオフィルムの形成を防ぎやすいです。
キッチンペーパーで拭き取りを済ませておくだけでも良いので、水気を残したままにしないよう注意してみてください。
ぬるぬるした犬の食器はどこで洗う?まとめ
ぬるぬるした犬の食器は、どこで洗っても問題ありません。
キッチンで洗ってもOKですが、人間と犬のスポンジを分けて洗うように心がけましょう。
食べ終わったあと、犬の食器がぬるぬるしている理由は、バイオフィルムという生物膜が発生しているからです。
犬の食器に付着したバイオフィルムはアルカリ性由来のため、一般家庭で使用頻度の高い中性洗剤では、分解しにくい特徴があります。
バイオフィルムを落として除菌するには、酸性由来の洗浄方法で、しっかり水分を乾燥させるのがポイント。
熱湯消毒も効果的なため、それぞれのご家庭にあった手段で適切にぬるぬるした犬の食器をキレイに洗い流してみてください。